場外

para la calle

WEST. LIVE TOUR 2023 POWER

記事タイトルと本文のグループ・事務所の呼称および関連部分の表現を一部修正しました。[2023-10-23 追記]

はじめてアイドルのコンサートに行った人間の備忘録です。


チケット

1月にアルバムリード曲の「POWER」のMVが公開されたときが確かツアーのチケット抽選申込期限ギリギリのタイミングで、MVの出来がいいなと思った。いっぺんコンサートを見てみたいなという気持ちになった。調べたところ、チケットはほぼファンクラブ会員向けにしか販売されず、プレイガイド取扱の一般販売は空売りに等しく、リセールもないとのこと。
ファンのかたには申し訳ないけど当該の事務所のファンクラブへの入会には抵抗感があった。CDをさんざん買っておいて何を今更なのはご尤もで、何と考えていたとしても詭弁と言われれば申し開きのしようもない。でもアイドルグループというのが何歳ぐらいまで活動するものなのか私にはわからず、そもそもこの事務所・このグループ名(※2023年1月当時)[2023-10-23追記]で今後恙無く活動を継続する目があるものかも危ぶまれ、だったらもう今が最初で最後のタイミングかなあと、数日考えたすえにファンクラブ入会申込をして、大阪公演のチケット抽選に申し込んで当選した。全席一律8800円+申込手数料800円の合計9600円。ファンクラブ入会費用は5140円 (入会金1000円、年会費4000円、事務手数料140円)。
申込手数料は、名称に反して、当選したチケットにのみかかる手数料という。1公演につき2枚まで申込できるそうで、2枚当選のときも2枚で800円なのかな?でなければ実質的には総額9600円のチケット代であるといえる。当選時に即時決済ではなく入金手続が必要。改善の余地はいくらでもありそうなシステムではあるものの、チケットに限ったことではないし、本筋ではないので触れない。
チケットぴあ取扱の一般販売ではチケット代9300円(各種手数料550円がかかり、合計9850円)。


服装・持ち物

来場者は意外と、みんながみんなメンバーカラーのすごい服を着ているわけでもなかった。意図せずメンバーカラーの服を着るなどした状態でローカルルール違反をしてしまってそのカラーのメンバーの印象を悪くするとかいったことは避けたかったので無彩色の服で行った。
私はビジターファンとして行った神宮球場でヤクルト応援傘を買うような人間なので、「ペンライト必須」という口コミを目にして、うーん、要るんかなあと考えたものの、公式グッズのペンライトがダンベル型だったので、たった1回使うだけでそれはちょっと持て余すな、と思って見送った。去年までだったら家で吉田正尚のチャンスダンベル代わりに振って再利用できたかもしれない、でも正尚はもういないので。あったほうがよかったか、と聞かれたら、若干手持ち無沙汰だったのは事実、と答えたい。阪神タイガースが勝ち試合後に振るためだけのペンライトを最近新発売して、それは買ったので、楽しいのはわかる。
あとは野球観戦で使っている双眼鏡を持っていった。持ち物の財布・スマホ・双眼鏡・ハンカチ、全部ズボンのポケットに入れたら手ぶらで事足りるような軽装で、どしゃ降りだったのでビーサンで行き、濡れた折り畳み傘をスーパーのレジ袋に入れて持ち込んで、出てきたメンバーのきらびやかな出で立ちを見て、しまった、ちょっと演者に失礼な恰好で来たな、と思った。


会場

大阪城ホール。意外とそんなに広くない会場でやるんやなと思った。アイドルのコンサートはすべてドーム公演だと思っていた。
大阪城ホールは利用する側として行ったことが一度あるきりで、そのときは機材搬入口から出入りしたので正面玄関を今回はじめて見た。傘を畳む人などで軒下が混み合うなか、スーツ姿の大勢のスタッフのかたがキビキビと列を捌いていた。入口には、録音機器の持ち込み禁止などの表示と並べて、規定サイズ確認のための団扇の実物の例示や、「ネームボード」の持ち込み禁止、といった掲示があった。ここに実物を貼るためにイベンターのかたが100均とかで団扇を買うのかな、と思ったらちょっと可笑しくなった。
中に入るとコンコースの壁際の地べたに座っている人が物凄くたくさんいて、たくさんというか、地べたに座る人か壁にもたれる人ですべての壁際が埋まっていて、雨でじめじめしていたのもあって戦時下の地下壕じみた雰囲気だったのでびっくりした。ロビーの混雑緩和のためにも座席で待つようにという館内アナウンスが再三流れているのにもかかわらず、なぜ座席に座って待っていないんだろう?座席の離れたお友達と旧交を温めているのかな?と思ったけど、あとで、それ以外にも座席に行かない理由がある人がいるのだろうなと察する出来事があった。なんしか今からよそさまの椅子に座るのにその前に地べたに座るのはいかがなものかなと思った。ビーサンで来たやつに言われたくないやろうけど。
トイレは多いらしく、巡回スタッフのかたにより、すいたトイレへの案内が徹底されていた。トイレ個室扉の戸尻側上方にはペナントのような小さなボードが取り付けられていて、扉が開いていればそのボードが個室外側に出っ張るので遠目に空きが一目でわかるというすばらしくアイデア力のあるデザインに感心した。アナログでローコストで、どこも見習うといい仕組みだと思う。(※追記:このあと、甲子園球場でも一部のトイレでは同じ仕組みが導入されていることに気づいてびっくりした。これはもう実家みたいなもんで、よく行っているところほど見てないものなのだなと思った。)


座席

オリックス戦みたいに、入場口でデジタルチケットのQRコードを呈示するとその場で紙の座席券が発行される仕組み。オリックス戦のペラペラの感熱紙と違い、裏面にコンサートタイトルロゴのプリントされたしっかりした紙で、一瞬でパタッと出てくる。これは甲子園球場のこうチケの発券機の感じに近い。紙質も似ている。
デジタルチケットはQRコードの周囲にGIFアニメのようなものが点滅している。スクリーンショットではないことが一見でわかるようにだろうけど、ごく単純なアニメーションで、ページごと簡単に偽造できそうではあるので、全体の運用のなかではこれは瑣末なことなのだろう。電波障害等に備え、事前にこのページを表示させてそのまま来場するように、という主旨の注意書きもあり、ブラウザが勝手にリフレッシュされない限りは入場時のサーバアクセスが求められるものでもない。
注意事項には身分証明書とファンクラブ会員証を持参するようにと記載されていたけど、呈示は求められなかった。
席種はアリーナ席とスタンド席があり、座席券発行まで席種も含めどこの座席が当たっているのかいっさいわからない。席種も?と思ったけど、アイドルに限らず、大規模なコンサートを行うミュージシャンはわりと導入しているシステムらしい。
私に割り当てられたのはスタンド席で、ハッチから入場したところの中段通路から3段降りた席。1枚申込のチケットというのは、プロ野球でもそうだけど通路側席が当たりやすいもので、なんとなく通路側席が当たるのではないかと思っていたらやっぱり通路側席だった。ちょうど階段通路越しに視界がひらけて見やすいうえに、傾斜もけっこうあり、ステージからは遠いものの全体が見渡せて、雰囲気を楽しむのにすごく良い席だった。
開演前、隣の席の黒っぽい服装の2人組客が座席に座らずにスマホを操作しながら小声で話し合っていて、開演15分前に2人で大荷物を全部持って出ていったので、トイレかな、間に合うかな?と思っていたら、開演10分前に白っぽい服装の2人組客、つまり別人が来て席についた。うわ、怖、と思った。コンコースで地べたに座っていた人たちのなかにもこういった座席トレードを行っていた人がいたのかなと、そこで気がついた。
私は良席だと思ったものの、近くで見たいとか演者の目に留まりたいとかいう欲は叶えられそうにない席なので、じゃあこの人たちはアリーナ席かなんかを売ってここへ来たのかな?でも手製の団扇を持っている。ファンではあるのだな、何で席を代わったんだろう、と不思議に思ったけど、所詮他人事なので深く考えないようにした。


客入れSE・影アナ

客入れSEは全部既発表曲のバックトラックだと思う。音が小さくてボーカルが聞こえなかっただけかもしれない。シングル曲ではない、つまりバックトラックが音源として世に出ていない曲もかかっていて、せっかくだからもうちょっと大きい音で聞かせてほしかった。しかしたとえばライブハウスなんかだと客入れSEは出演者の作ったプレイリストだとかが、つまり出演者の曲ではない曲が流れているもので、演者の曲、それもカラオケがかかっているというのも独特だなと思った。
待っていると、ラインが繋がっているか確認するようにギターの音が一瞬鳴って、生バンドが入っているとわかった。開演時間近くになると「ええじゃないか」がすこし大きな音量で流れ出し、お客さんが歌い出したので驚いた。曲終盤にはたくさんのお客さんが突然声を揃えて「もう一回!!!」と合いの手を入れたので、急なことだったためビクッとした。
お客さんの声出しが終わるとなかやまきんに君による録音の影アナが始まった。めちゃめちゃ笑った。影アナだけど、ステージ両袖と、後方スタンドの上部にある、合計三つのサブビジョンに書き起こし字幕が出るのが親切。おもしろかったので内容は頭に入ってこなかった。多分オーソドックスに撮影禁止だとかそういう注意事項を言っていたと思う。


ステージの構成

大阪城ホールの座席表ページのステージパターンBの構成に、正面ステージ真ん中からアリーナを割るように花道が伸びて、アリーナ中心よりすこし正面ステージ寄り、多分正面ステージでつぶした分も含めたアリーナ全長の真ん中に中央ステージが、それを通り越して花道のドン突きにサブステージがある。中央ステージから脇方向にも花道が出ていて、これは正面ステージの左右端からスタンド沿いに伸びる花道と繋がっている。合流点も小さいステージ状だった気がする。
サブステージは花道から数段上がって、スタンド最下段に近い高さで、ステージの淵を残した中央部分の床が、せりとは逆でジャッキアップされる仕組み。ゆっくりとではあるものの、けっこうな高さまで上がるのに柵も支えもないし命綱もなさそう。よく事故を起こさずやれているなと感心した。起こしているのかもしれないけど。揺れそうなのに普通にパフォーマンスしていた。公演中何度か、メンバーが足を投げ出して座っているときなどに靴裏を双眼鏡で見てみたけれど、滑り止め加工などもしていない普通の靴に見えた。
ステージが四方にあるものの、アリーナの椅子はすべて正面ステージを向いて並べられていて、立って見る前提にしても、花道やサブステージを見ようとしたらぐるぐる体の向きを変えなければならず、見上げる場面も多そうで、近いのは近いけどアリーナ席は見づらそう。
野球にしても、低い位置の座席はプレーが見づらいので私はあまり好きではなくて、極力上のほうの座席を買うけど、グラウンドが近くて迫力があるという理由で下のほうの座席を好む人もいるし、このへんは人によるだろうなと思った。アリーナかスタンドかぐらいは選ばせてくれてもよさそうなものだけど、それも揉めるのかな。
花道を通って各ステージへ移動するので、正面ステージから一番遠いスタンドにいてもけっこう近くまで来るんやなあ、と思っていたら、サブステージから、サブステージと同じ高さの一人乗りの移動ステージにメンバーが乗り移って、その移動ステージが1台ずつ、アリーナ外周、スタンドのきわを人力で押されて移動して周回するという演出があり、人力!!!と驚いた。押しているスタッフのかたを双眼鏡でガン見した。スタックした車を数人で押しているような風情だった。あるミュージシャンが、昔、大掛かりなコンサートを行うことで有名な国民的音楽ユニットのコンサートスタッフをしていて、人力でステージを回すタイミングを思い切り間違って即クビになったという話をしていたけど、ああ、こういうのの段取り間違ったらそらクビになるやろな、と思った。
PA席がどこにあるのか全然わからなかったけど、終演後に退出するときに見たら自分がいたスタンドの死角、サブステージの脇にあった。
さりとてスタンド席は遠いよな、自分はそれでも中段通路よりも下だけれど、上のほうの席は遠いんちゃうかなあと思っていたら、アンコールでは正面ステージセットの両袖、スタンド階中段通路からセット裏に通じる揚幕あげまくのようなものが開いて、今度は保育園のお散歩カートみたいなやつにメンバーが一人ずつ乗って、やはり人力で押されて出てきて中段通路を周回するという演出があり、これはいっさい想定していなかったので心底驚いた。想像の範囲外の力業を目の当たりにするとなぜか笑いが止まらなくなってしまうものなのだなと思った。全席同じ値段で売るなら確かにそのぐらいのサービスは要るよな、ここ通ったらええサービスなるやんって考えた人がおったんや。階段通路上端にスタッフのかたがしゃがんで両腕を広げて、客が通路に出ないようにブロックしておられた。そういう演出の場合、客が急に腹を下してもトイレに行けなくなるけど、演出の都合上ホールから退出できない時間帯がある旨の事前告知は特になかったように思う。きんに君が言うてたんかな。主催者を問わずこの規模のコンサートではそういう演出があるというのが常識なのかもしれない。プロ野球もライブハウスもトイレは行き放題なので考えたことがなかった。
というわけで、メンバーの多分全員が5メートルほどの距離のところを通っていくというこの演出と、あと隣の席の、多分座席をトレードして来た人が、特定のメンバーが通るときに団扇を振ってアピールしているのを目にし、ああ、ここがよくて来た可能性もあるのか、と思いながらお散歩カートを見ていた。
なおこれはやっぱり基本的にはスタンド上方のお客さん向けのサービスのようで、メンバーは大体は上の客席を向いていたものの、こちらが通路側席だったのもあって階段通路越しに、たまたま下方の座席を覗き込みながら通過する重岡さんがよく見え、顔が過剰に良いな…と見ていたら目が合ったので、お、と思って咄嗟にマスクから出た目だけでニッと笑ったところ笑い返されたのでびっくりした。ペンライトも団扇も持っていない人間に向かって愛想させてしまって申し訳ないな~という気持ちにもなった。まあでも全部勘違いかもしれないね。重岡さんの顔が過剰に良かったのは事実。


ステージセットとビジョン、演出

想像よりはシンプルなセットで、正面ステージにはスクリーン式?の大型ビジョンがあり、ステージ奥にバンドセットがあり、その手前、ビジョン下に雛壇が何段かあり、ステージには横に細長いせりがあって、それはメンバーが演奏する楽器が楽器台に載って出てくる際に一度使われた。ステージや花道のフチが多分LED照明でいろんな色に光るのは、演出でもあるし事故防止策でもあるのかな。光っていないときも多かった。私なら踏み外す。球場の照明も近年急速にLED化が進んでいる。コンサート照明も、技術面・コスト面の双方で、実現可能な演出がどんどん増えているのだろうなと思う。
全体の照明はわりとどの曲でもオーソドックスだったように思う。もっとレーザーライトなどを駆使して派手にビリビリやるものかと思っていたけど、それはコンサートのコンセプトや会場規模にもよるのかもしれない。
大型ビジョンは、全曲ではないもののメンバーが抜かれたり、演出映像が映されたり、サブビジョンにはビジョンの映像に加えてカラオケのように歌詞が表示され、これも親切。しかし収録のためではなくあのビジョンに映すためだけにあれだけカメラが入ってるんや。サブビジョンぐらいならフェスでも見るけど、たくさんの演者をああいうふうにリアルタイムで映すとなると演者も含めてスイッチングとかもバッチバチに決めておかないといけないし、本番中もすべてのカメラマンに何をどう押さえてほしいかをディレクターが指示出ししながら映しているのかな。
特効はいくつかの曲でステージ前方のへりなどに火柱あり。あとどこだったか1曲スモークあり。テープの発射2回あり。


演奏

アイドルは全部口パクだという思い込みがあり、音楽番組などを見るたびに口パクではないことに驚くし、他のアイドルグループは見ないので今どきのアイドルがどうしているものか知らない。コンサートはどうなんだろう、と思っていたけど、基本的にはマイクがオンで実際に歌っていて、録音の声もかぶせて流していたりはするのかな、そしてダンスパフォーマンス曲は口パク、というふうに、適宜使い分けられているらしい。口パクっていう言い方はダメなんかな、リップシンクと呼ぶといいのかな、現代では。
ダンスパフォーマンス曲は想像していたよりも少なかった。これもコンサートのコンセプトによっても違うのかもしれない。バックトラックもすべて録音だろうと思い込んでいたので、実際録音が流れる曲もあるけど、ステージ後方の5人の生バンドが演奏する曲が多かったのが意外だった。バンドメンバーは本編とアンコールの二度紹介されたけど、二度とも下の名前しか紹介されなかったため、記憶していた名前を頼りに後日調べたものの、全員は覚えていられずわからなかった。下手しもてから順に
・キーボード 井上薫さん
・ギター(×2) 坂本遥さんともうお一人
・ベース 林あぐりさん
・ドラムス 渡邊シンさん
だったと思う。ギターのお一人が、名前を忘れてしまったのでわからない。すみません。
客から見えにくい位置で演奏してもらうのでもなく、逆にむしろ派手な衣裳を着てもらってステージ装飾の一端を担ってもらうのでもなく、黒っぽい目立たない衣裳で揃えたうえでバンドセットを敢えて見せている、と解釈すれば、お飾りじゃない、リスクのほうが大きいはずの生演奏にもこだわりがあるということなのかなあと思う。ただビジョンをまたいで配置されているので、キーボードからドラムスまでは相当な距離があって、多分同期も流れていると思うけど、それでも演奏に差し障りないんやろうか?と思った。
特にキーボードとギターのかたはときどき腕を振り上げて煽ったりもしておられ、おっ、かっこいいなと思いながら、バンドはビジョンには映らないので双眼鏡で見たりした。生演奏だけのライブというのもアイドルでもやったりするものなのかな、ファンの規模が規模なだけにきっと難しいのだろうけど。


セットリスト

ツアータイトルがアルバムと同一なのでアルバムリリースツアーだと思ったのだけど、そういうことでもないのか、アルバム収録新録曲20曲のうち6曲はセットリストに入っていなかった。全曲やったらそれだけで終わってまうもんな、とも思うし、アルバムで私の1番目2番目に好きな「Strike a blow」と「Guilty」は入っていたので不満はない。じゃあ何のための音源リリースだという疑問は湧くけど、それはもう、1タイトルにつき4枚売らないといけないからだろうな、じゃなかったら重複するトラックを買わないと楽曲をコンプリートできないような売り方はしないだろう。
それよりも、何よりも、びっくりしたのはフルコーラスやらない曲がほとんどだったことで、その発想はなかったな!本当にびっくりした。
ロックのライブなんかだと、全曲フルが当たり前で、むしろイントロが追加されたり、間奏でコール・アンド・レスポンスだとかギターソロのアレンジだとか語りだとかが入ったりした結果、音源の倍以上の尺になるなんていうのもよくあることで、曲をダイジェストしてあるというのは斬新やな~と思った。ライブDVD収録曲リストなんかを見て、えらいようさん曲やんねやな、何公演分か入ってんのかなと思っていたのだけど、そういうことかと腑に落ちた。そしてとにかく衣裳替えが多い。そんなにか?っていうぐらいお色直しする。アイドルのコンサートってショーなんやなあ、と思った。ときどき演者が全員ハケて、その間にビジョンに演出映像が流れるところがあり、なるほどこういうのを使って時間を稼ぐのか、と思った。

(以下のセットリストの曲目と順番はインターネット上の情報を鵜呑みにしました)

・僕らの理由
・ええじゃないか
・WEST NIGHT
・週刊うまくいく曜日
しょっぱなアルバム曲じゃない。
この選曲は、今回のコンサートはシンプルに曲を聞かそうというコンセプトの宣誓のようにも思われ、私は基本的には「僕らの理由」のような感じの曲が好きな人間なので、普段聞いているジャンルからそれほど遠くないものを見せてくれるのかも、と期待を持ったところ、次の曲に際して急に怪鳥じみたポーズを取りはじめたので、これはなんやろ…、と思った。毎回するのかな。曲途中でアクロバットをやっている人がいて、うわ!アイドル!と思った。目が悪いのでよく見えず誰かはわからない。多分濵田さんと神山さんかなあ。

・Rewind It Back
・Mood
多分「Rewind It Back」のときに花道で等間隔に並んでSmooth Criminalのゼロ・グラヴィティをやっていた。双眼鏡を出すのが遅れたし照明は暗めだったので仕掛けは見えなかった。残念。フィジカルの見せ場はよく見たい。ここでは靴裏は見ていない。見えるタイミングがなかった。ここはダンスパートなのでCD音源と同じボーカルが流れていたと思う。
・膝銀座
・アンノウン
・Strike a blow
・サムシング・ニュー
「膝銀座」は演出映像に友近さん出演。
「アンノウン」は中間さんと藤井さんのサックス演奏あり。「Strike a blow」は神山さんのギター演奏あり、ボーナストラックだからセットリストに入っていないかもしれないなと思って行ったので、イントロを聞いてテンションが爆上がりした。短かったけど…。この曲はやっぱりアホみたいにモッシュが起こっていた時代のフェスで聞いてみたかった。確か「サムシング・ニュー」も神山さんのギターあり、イントロのみかな?すぐローディーさんに渡していた。
ところでお客さんは団扇やペンライトのために手が塞がっていて、ハンドクラップも拍手も動員のわりに鳴りが小さいなと感じた。仕方ないのかな。カンフーバットみたいに首から提げられてそれ自体も叩けるペンライトにしたら良いのでは?ペンライトはとても綺麗で、ダンベル型は2箇所光るので、揃って印刷ズレしてるみたいでおもしろかった。
「アンノウン」からの2曲は中央のステージでのパフォーマンスで、ステージ上に土俵の吊天井みたいな屋根があり、その下のスペースを四角く囲うように床から天井に向けて強い照明が出ていて、ホログラムで出来た檻のようで綺麗だった。あの屋根いつ消えたんかな…。屋根があったと思う。記憶がさだかでない。屋根じゃなくて昇降式の照明かもしれない。

・エゴと一途
・真っ直ぐ
ちょっとどうかと思うぐらい踊りの上手い人がおるなと思ったら濵田さんだった。濵田さん、絞殺がよく似合う。仮面とソファと、アカクラゲみたいなリボンを使った演出がおもしろかった。そうやな、触手系やな、あの曲。納得。ペンライトはユニット曲のときにはその参加メンバーの色に揃えるものらしく、色合わせが黄色と紫と桃色の取り合わせになるために場内がむやみに淫猥な雰囲気だったのもよかった。
桐山さんと神山さんの歌はすばらしかった。コンサート全編で、音程がやや不安定なくだりがあっても桐山さんと神山さんが歌うとギュッと正しい音に戻ってくる感じがあって、歌唱力がとにかく飛び抜けて安定してるんやなあと感じた。パフォーマンスだけでも女性らしいので、やや少女趣味な衣裳がちょっともったいない気もしたけれど、それはそれとしてかわいかったから良いと思う。そのロング丈の上っ張りを脱ぐと次の衣裳への早着替えができるというショー感も、見慣れていないので新鮮だった。ペンライトはみかん畑みたいだった。

・ハルカナレ
・Big Shot!!
・Mixed Juice
ここのパートは赤とベージュを基調にして全員デザイン違いというアイドルグループらしい衣裳で、パフォーマンスもアイドルグループっぽいものだった気がする。「Big Shot!!」は勝手にタオル回し曲だと思い込んでいたけど別に回さなかった。回さないのか。
「Mixed Juice」のあとにかなり長いトークパートがあり、ようけしゃべらはんなあと思った。もちろん楽曲よりもパーソナリティ重視というファンのかたもいるのだろうし、トークもアイドルには重要な要素なのだろうな。小瀧さんの一発芸がめちゃくちゃおもしろかった。毎公演違うことやってるのかな。小瀧さんの一発芸がなかったら、一番笑ったところが影アナとお散歩カートになるところだった。
あと、トークパートのはじまる際にきちんと「じゃあ一回座っていただいて…」というような感じで客に対して着席を促す声掛けがあり、ありがたかった。長いトークは演者にとっても息を整えられる時間なのかもしれないし、スタッフさんにとってもセットを戻したり何かしら帳尻を合わせたりしたうえでひと息つけるタイミングなのかもしれない。

・似てないふたり
・ぼくらしく
「似てないふたり」はメンバーによる演奏で、下手しもてから順にギター神山さん、キーボード重岡さん、タンバリン藤井さん、カホンとウインドチャイムとその他小物桐山さん、シェイカー小瀧さん、グロッケン中間さん、ギター濵田さん。
「ぼくらしく」はステージに腰を下ろして、藤井さんのギターと重岡さんのブルースハープで曲前半はシンプルに弾き語りというのも良かった。藤井さんの声と歌い回しが、やっぱりこの曲調に合っていてすごく良い。重岡さんのブルースハープも綺麗だった。ペンライトは赤と青なのでワイヤージレンマのリード線のようでもあり、角度によっては色が重なって、二藍のグラデーションのようでもあった。

・イキテヤレ
・Guilty
・パロディ
「Guilty」もボーナストラックなのでやらないのじゃないかなと思っていたから嬉しかった。ここらあたりのパートは確か白基調にゴールドの装飾の入ったゴージャスな衣裳を着ていて、ああこれはテレビでよく見たジャパニーズアイドルやなと思った。あんまりそういう恰好をしている姿を知らないので、アイドルなんやなと改めて思った。
・Anything goes
・アカンLOVE ~純情愛やで~
・ズンドコ パラダイス
パリピポアンセム
おもしろエアロビ風衣裳で、ダンベル型ペンライトを活かしておもしろエクササイズを客に強要するパート。中間さんを見ていて、動きになんとなく球団マスコットっぽさがあるなと思った。ドアラっぽい。コンサート中メンバーに手を振ったりとかそういうことはほぼしなかったのだけど、なぜか中間さんには振りやすかった。多分私は中間さんのことをグループのマスコットだと思ってる。
・愛情至上主義
・しあわせの花
・証拠
・POWER
「愛情至上主義」は聞けると思っていなかったのでとても嬉しかった。この曲はもともと短いからかフルコーラスだったと思う。このパートが一番、それこそサンボマスターを含み、私が普段よく聞く音楽と近く、ホームに近い感覚があった。ロックのライブで客がよくやる、腕を上げて振るような動きは、団扇を持つ高さについてのルールが定められていることを考えればもちろん後ろのお客さんにクソ迷惑であることが明らかなので、行儀良く聞かざるを得ないことはやや残念だった。
全編通してみれば、どちらかといえばパワーポップ、ポップロック寄りの内容で、もしかしたらアイドルらしいキラキラした楽曲のファンには物足らんのと違うかな?とも感じたけど、もしこれがアイドル文化になじみのない初心者への挨拶代わりのセットリストだったなら100点だと、アイドルになじみのない人間としては思った。

・We are WEST!!!!!!!
・ムーンライト
・むちゃくちゃなフォーム
アンコール1曲目はお散歩カートに驚きすぎてまったく記憶にない。あの合いの手とかどうなってたんやろ。何も聞いてない。
本編の最後かアンコールか、タイミングは忘れたけど、特効のメタリックのリボン、いわゆる銀テープというやつがドカンと発射されて落ちてきた。ああいうのはアリーナに発射するものと思っていたけど、スタンドにも大量に降ってきたのでびっくりした。真上からゆっくり時間をかけて、海中で身を捩るウミヘビのようにくねりつつ落ちてくるテープを見上げながら、甲子園の3塁側内野席で高橋周平が高々と打ち上げたファウルボールが真上から落ちてきて直撃したときのことを思い出し、「ファウルもこのぐらいのスピードで落ちてきてくれたら痛くないのに…」と思った。ファウルボールは凄い速さで落ちてくるのにスローモーションに見えて、これ素手で捕れんちゃう?と思っていたら逃げ遅れた。あれは痛かったな、捕り逃したし。硬球は当たると痛い。あの落ちてくるボールを見上げる感じとよく似ていた。そして階段通路に落ちたテープをすぐさま物凄い形相で駆け上がりながら回収していく客がいて笑ってしまった。あれでしょ、メルカリで売るんですよね。逆に終演後に、見えるようにテープを持って、退出していく人を眺めながら「…このへんの人はもうみんな取れたんかも…」と話し合っている人たちもいて、あ、手に入れられなかった人に分けてあげようとしているんだな、優しいなと思った。
「むちゃくちゃなフォーム」のアウトロがリピートされるなかメンバーの挨拶があって終演。公演時間は2時間15分ぐらい?追い出しのSEは聞きそびれた。

「ビジョンがあるからといってついビジョンを見てしまうのはもったいない」という界隈育ちなので、もったいないと思う気持ちを振り切ってビジョンを注視するのも難しく、全体を見るのに手いっぱいで、どこに誰がいるのかもあんまりよくわからないまま、個々のメンバーのパフォーマンスを楽しむところまではいかなかった。「担当(=いわゆる「推し」)」がいたら注目ポイントが絞りやすいのかな。
ただ座席に恵まれたので、いっせいに点されて揺れるペンライトの綺麗さとか、場内の一体感とかを後ろや真横から見られたことが良かった。
たまにうちの母を野球観戦に誘って、せっかくだからと張り切って前のほうのちょっといい席にも何度か連れていったあとで、「どのへんの席がよかった?次どこで見たい?」と聞いたら、「後ろのほうがいい」「どのぐらい盛り上がればいいかわからんし、なんか盛り上がるポイントがあったときは盛り上がるファン越しに見たい。ファンが盛り上がってるのを見たい」と言われて、え、そうなん?後ろの席のほうが安いと思って、遠慮で言うてるんかな?と思っていたのだけど、ああ、あれ、本心やったんやな、と思った。


終演後

ツアーパンフレットを買っておこうかなと思ったので会場を出てグッズ売場へ。途中、石垣を背景に、全長1メートルぐらいの、メンバーのフルネームを書いたボードを持って撮影している人がいて、これが「ネームボード」か、と思った。会場に持ち込みできないということは、記念撮影のためだけに作成して、どしゃ降りのなか持参されたのかな。フォントが勘亭流だった。千社札が巨大化したみたいな文化なのだろうか。すらっとした女性が、いかつい書体の巨大な他人の名前をかついで雨に濡れながら記念写真を撮るガッツ、クールジャパン感があるなと思った。
グッズ売場入場は時間帯指定の事前予約制なので、終演時間を予想して予約を取っていたのだけど、ライブハウスの物販と違い、終演直後のタイミングで買いに来る人がまずいないと見えて、お客さんはほぼいなかった。段ボールとビニールで出来た素朴な手作り雨よけカバーを被せたコードリーダーを構えてくれていたスタッフのかたに予約画面を呈示して入場し、まったく並ぶことなく購入できた。
グッズ購入のためのアプリというのもあって、そのアプリで商品をリストアップしてQRコードを作成してレジで呈示するとそのリスト通りに商品を用意してくれ、クレジットカードを登録しておけばその場で決済してくれる、という仕組みで、みんながそれを使っているのだったら、売場のかたも同じオペレーションでできるし使ったほうがええかなあ、と思って一応使ってみたけど、パンフレット1冊を現金で買うのには多分必要なかったな。たくさん買う人には便利だと思うし、もちろん売場のかたも楽だと思う。レジ袋はない。パンフレットはパッキングされていたので、折り畳み傘を入れていたびちゃびちゃのレジ袋に入れても大丈夫だった。多分。まだ開けていないので大丈夫じゃなかった可能性もある。2500円。
レジは10台もなかったように思う。コンサート規模にしてはグッズ売場が小さいなと思ったけど、今どきは事前のネット販売などで買う人が多くて、現地で買う人はあまりいないのかもしれない。
公園出口まで向かう道で、照明塔がある、と思って経路をはずれて覗いてみたら野球場があった。コンサートを見て思ったのは、アイドルの曲というのは大体どの曲も、広い空間でたくさんの人と体験を共有することを前提に作られてきたんだろうなということだった。今日聞いたような音楽を野球場のようにひらけた場所で聞いても楽しそうな気がした。グッズ売場近くの機材搬入口のあたりには、特効の機材車らしきものなどを含め、たくさんの大型車輌が停まっていて、これ全部このコンサートの関係車輛かな、ようさんの人が関わってんねやなと思った。関わるすべての人たちが葛藤も煩悶もすることなく心から誇れるエンターテインメントを目指してほしいと思った。




LIVE TOUR 2023 POWER
2023年3月18日~5月24日(全8会場31公演)
主催・制作:ヤング・コミュニケーション
運営:キョードー大阪(大阪公演)