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para la calle

国立国際美術館|特別展「古代メキシコ」 マヤ、アステカ、テオティワカン

通常17時まで開館のところ、金曜・土曜は夜間開館ありで20時までやっているというので、遅い時間のほうが空いていようと思い17時すぎごろから入館した。
夜間開館というのはシニア層がごっそり減るものだけど、思いのほか若い、20代ぐらいの人が多く、こんなにたくさんの若人が古代メキシコにそんな興味があるものかしら、と思っていたら、グッズ売場に「コラボグッズ」がたくさん置いてあって、若人がそこからいろいろ選んでいる。よくわからないけど「Fate/Grand Order」というソシャゲとコラボしているらしい。コラボでそんな来んのか、ソシャゲ、まったくばかにならんな、と思った。
5年ほど前に石切劔箭神社に初詣に行ったとき、宝物殿の特別開館というのをやっていて、警備員の人が「特別開館こちらです~」とわざわざ呼び込みまでしていて、なんじゃなんじゃと入館したら若人がみちみちになっていて、なんでこんな地味な神社の宝物殿に若人がこんなにおるんやと思ったら、どうも「刀剣乱舞」というソシャゲで出てくる刀(「石切丸」というらしい)が展示されているのだ、ということであった。だって刀やろ?絵がついているわけでもないのに、刀だけを見に来るんや、ファンというのは情が深いんやな、と思った。若人はアグレッシブだ。神社の目の前のうどん屋に多分無許可のコラボメニューまであった。

ところで絵を見るのはわりと好きだけれども物を見るのは別にそんなに興味がないので、今回のこの特別展は、メキシコねえ、どうかなあ、まあ時間があれば行くかなあ、と思っていたところ、概要を見てみたら「球技をする人の土偶」という出展物がある。球技好きとしては見に行かなあかんのではないか、と思って見に行った。
球技をする人の土偶は割と最初のほうに展示されている。全部見終わってもう一回おかわりで見に行こうとしたらめっちゃ遡らなあかんかって疲れた。




(球技をする人の土偶(マヤ文明、600~950年、ハイナ出土、メキシコ国立人類学博物館蔵))

見てくれこの躍動感、とってもかわいいね。
グッズがあれば買ったのだけど、これは別に目玉展示などではないらしく、そのほかの石彫など5体といっしょくたになった写真のポストカードと、あとは線画になってしまっているポーチやブックマーカーなどしかなかった。わかってないな、これのレプリカ文鎮などをつくるべきですよ。

参考出展されていたゴムボールは晩白柚ほどの大きさで、腰につけた防具でボールを打つものらしいので、ベースボールやクリケットとは全然関係なさそう。むしろなんでサッカーみたいに足で蹴るんじゃなかったのかなと思う。球技としてはサッカーがもっともプリミティブじゃないですか?日本だって蹴鞠があるし。ゴムボールが硬かったのかな。
どういう競技かはよくわからないが、王城を取り囲む都市のなかに球技場が作られていることがわりとあったらしく、都市の図面を見ると、まあメインスタンドとバックスタンドがある感じの、要はコロシアム系の円形球技場ではなくやはりサッカー的な四角い球技場だったようである。単なる娯楽というだけでもなく、儀式的な意味合いがあるものでもあったようだ。でもスタンドがあるってすごいよね。他人がやってるスポーツを見るという習慣がすでにあったということでしょ?

Wikipediaを読む感じだとやはりゴール型競技らしい。アステカ時代の、壁に縦についた輪にボールを通すというルールのその壁の輪(「チチェン・イッツァの球戯場の側面に設けられた輪」)のレプリカが会場の壁に取り付けてあった。なんだろうな、ただの飾りかな、と思ったけどあれがゴールだったのか。「実際には輪にボールが通ることはめったになく」とある通り、なかなか輪を通すのは大変そうなサイズ感だった。




(壁に照射されていた文字らしきもの)

この文字は、本当に一文字で「Play ball」の意味を持つものなのかよくわからないのだが、展示ではなくてあくまでも会場の演出として壁に照射されているだけらしく、実際にこの文字が使われた石板などが出展されているわけではない。というのを、会場におられるスタッフの方に一応確認した。
あのスタッフの方というのはどういう方なのか知らないけど、単に私程度が疑問に思う展示方法とかについてなら質問したらほぼ100パーセント普通に答えてくれる(その展示は向こうにありますとか、この彫刻は足の裏に釘打って固定しているから立ってますけど釘がなかったらやっぱり倒れますよとか、この絵だけアクリル板で囲ってあるのはこの絵だけ小さくて来場者のカバンに入っちゃうサイズだからだと思われますとかそういうことなら教えてくれる)ので、私はわりと質問するけれど、質問してもいいものなんですかね?わからんまんま20年以上美術館や博物館に行ってるな。

「pitz」と読むらしい。「Play ball」という動詞の意味もありつつ、「Ballgame」という名詞というか、ゲームの名称だったりもしたのかな。



球技以外の出展物ももちろんおもしろかった。詳しくないのでとくにそれぞれについて感想はないが、石偶・石彫・土偶・壁画・土器等どれもデザインがかわいらしく愛嬌があって見ごたえがあった。会場にずっと古代メキシコ感を演出するBGMがかかっていたのもおもしろかった。おもしろかったけど、あれはなんなんですかね?
全部の出展物が写真撮影可で、全部の出展物と記念撮影をしている中年男女がおり(つまり出展物だけを撮るのではなく、横に並んでピースして自分も写真に収まっている)、えっ、全部撮るの?と思った。
写真撮影可はうれしいが、流れがよどむのが難点である。


その他、館について書いておきたいことなど

チケット一般は2100円で、ウェブサイトにはとくになにも書いていないし窓口でもこちらから質問しない限りは案内がないけど、なにかしらの友の会会員だったり大阪メトロのICカードを持っていたりすれば前売・団体料金で購入できる。なんでウェブサイトに書いておかないのか謎。
あと、目録が、用意されてはいるものの「ご自由にお取りください」形式ではなく「PDFで見てください。無料Wi-Fiあるから。紙が必要なら申し出てください」という形式になっており、普通に「紙の目録くーださい」って申し出たら「紙ですか?」と問い返しながら(いや紙や言うたやろ今)ちょっとイヤそうに渡してくれる、というシステムに変わっていた。そんなに渡したくないならそれもウェブサイトに「目録はないから家で印刷してこい」って書いとくべきであり、スマホでPDFを参照させたいならスマホの画面にあわせた目録デザインを別途用意すべきであり、1枚目の右側が1ページ目、左側が4ページ目、2枚目の右側が3ページ目、左側が2ページ目という、完全に両面印刷を前提にしたデザインのものをそのままスマホで参照させるのはいくらなんでも乱暴だと思う。どのぐらい見づらいかは各自で
古代メキシコ展公式ウェブサイトをご確認ください。




特別展「古代メキシコ」 マヤ、アステカ、テオティワカン
https://mexico2023.exhibit.jp/
2024年2月6日~5月6日 国立国際美術館
主催:国立国際美術館、NHK大阪放送局、NHKエンタープライズ近畿、朝日新聞社
協賛:NISSHA
協力:アエロメヒコ航空、ダイキン工業現代美術振興財団
後援:メキシコ大使館
企画協力:メキシコ文化省、メキシコ国立人類学歴史研究所
観覧料:一般2100円